不妊治療〈体外受精・胚移植〉卵巣刺激方法

卵巣刺激方法

  1. 完全自然排卵周期
  2. 低用量排卵刺激周期
  3. 過排卵刺激周期

(1) 完全自然排卵周期

月経が規則正しい方(30日前後)で黄体機能不全がないなどの患者さまが対象になります。
完全自然排卵周期の場合は排卵誘発剤を全く使用せずに、脳下垂体から分泌される内因性FSH (卵胞刺激ホルモン)による自然な卵胞の発育をみていきます。月経2〜3日目から経腟超音波を用いて卵胞が16mm前後に発育するまで定期的に卵胞を測定していきます。また、同時にE2(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)などのホルモンも毎回測定し、卵胞径とホルモン値から卵の成熟度を予測し、採卵可能かどうか判定します。採卵が決定したら排卵させるための点鼻薬(GnRHa)を使用し、32〜36時間後に採卵します。点鼻薬使用時の黄体化ホルモンのサージが起こっている場合は次の日、サージのピークが過ぎている場合は、当日、緊急採卵を行うこともあります。
採卵時に既に排卵しており採卵ができない場合もあります。
自然排卵周期では採卵数は通常1個となります。良好胚が獲得できれば、採卵後、2日目、3日目の初期胚または5日目、6日目胚盤胞の段階で1個のみ移植します。
卵子が複数個採取できた場合、余剰胚は初期胚または胚盤胞で凍結します。
自然排卵周期は排卵誘発剤を使用しないため、患者さまにとって、一番負担の少ない方法です。

(2) 低用量排卵刺激周期

軽度月経不順の患者さまが対象になります。
月経2日目または3日目に受診していただき、超音波検査で遺残卵胞がないことを確認します。月経開始3日目から内服薬の排卵誘発剤(セキソビット、クロミッド)のみを服用し卵胞発育を助けます。卵胞が18mm前後に発育するまで定期的に卵胞を測定していきます。また、同時にE2(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)などのホルモンも毎回測定し、採卵日を決定します。採卵が決定したら排卵させるための点鼻薬(GnRHa)を使用し、32〜36時間後に採卵します。点鼻薬使用時の黄体化ホルモンのサージが起こっている場合は次の日、サージのピークが過ぎている場合は、当日、緊急採卵を行うこともあります。
採卵時に既に排卵しており採卵ができない場合もあります。
セキソビットは作用が弱いですが、副作用が少ないため、完全自然周期の次に自然な方法です。
クロミッドは、良好胚が獲得できた場合でも、子宮内膜環境の阻害により着床率が低下する場合があるので、受精卵は移植せず凍結することもあります。

軽度の月経不順の患者さまが対象になります。
フェマーラは男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素のアロマターゼを阻害することにより、女性ホルモンを低下させ、その結果、卵胞発育を促すFSH分泌量を増加させる働きがあると考えられております。月経2日目または3日目に受診していただき、超音波検査で遺残卵胞がないことを確認します。月経3日目から3日間フェマーラを服用し、卵胞発育を助けます。定期的に血液検査でE2(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)値を評価しながら、卵胞が16〜18㎜まで発育したら採卵日を決定します。良好胚が獲得できた場合でも、子宮内膜厚やフェマーラ投与終了時期により、受精卵は移植せず、凍結することもあります。

AMH値が保たれている患者さまが対象になります。
月経2日目または3日目に受診していただき、超音波検査で遺残卵胞がないことを確認します。クロミッドを連日服用し、月経8日目ころから定期的に血液検査でFSH(卵胞刺激ホルモン)値を評価しながら、FSH注射の投与量を決定し、過剰投与にならないようにします。また、定期的に血液検査でE2(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)値も評価し、卵胞が16〜18㎜まで発育したら採卵日を決定します。複数個卵胞が発育することにより、良好胚獲得する可能性が大きくなりますが、子宮内膜との同調性が悪くなるため基本的には、全卵凍結します。

軽度の月経不順の患者さまが対象になります。
月経2日目または3日目に受診していただき、超音波検査で遺残卵胞がないことを確認します。月経8日目ころから定期的に血液検査でFSH(卵胞刺激ホルモン)値を評価しながら、FSH注射の投与量を決定し、過剰投与にならないようにします。また、定期的に血液検査でE2(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)値も評価し、卵胞が16-18㎜まで発育したら採卵日を決定します。良好胚が獲得できた場合でも、子宮内膜厚やフェマーラ投与終了時期により、受精卵は移植せず、凍結することもあります。

セキソビット単独では、卵胞発育が弱い患者さまが対象になります。
月経2日目または3日目に受診していただき、超音波検査で遺残卵胞がないことを確認します。定期的にFSH値を評価しながら、必要最低量のFSH注射を追加投与していきます。

(3) 過排卵刺激周期

高温中期(ロング法)または月経3日目(ショート法)より連日点鼻薬を使用することにより、内因性のFSH(卵胞刺激ホルモン)、黄体化ホルモン(LH)の分泌を抑制します。このため自然に起こる排卵を抑制すると同時に、卵誘発剤(FSH/HMG)を連日注射することにより、1回に排卵する卵子の数を増やします。卵胞がおよそ約18mm径になるまで誘発をした後、排卵させるためのhCGの注射により、成熟させて卵子を採取(採卵)します。

完全自然周期のメリットとデメリット

メリット

  • ホルモン値を見ながら、必要最小限の排卵誘発剤のみを使用するため、卵巣や、体に対する負担が少ない方法である。
  • 過排卵刺激による連日注射により多くの卵胞が誘発されますが、消失する卵胞も多数あります。この卵胞の減少を防ぐことができる。
  • 高齢または卵胞の少ない人でも、自然排卵があれば可能。
  • 毎周期繰り返し行なうことが可能。
  • 卵巣過剰刺激症候群の発生が少ない。
  • コストが安価である。
  • 卵の数が少ないので無麻酔、局所麻酔薬で採卵ができるため採卵後1時間くらいで帰宅可能。

デメリット

  • 過排卵刺激周期のように排卵を誘発する黄体化ホルモン(LH)を抑制するGnRHa(点鼻薬)を使用しないため、自然排卵が起こることがある。
  • 少数採卵のため良好胚が獲得できず、移植が出来ない可能性がある。
  • 採卵日が直前にしかわからないため、予定が立てにくい。